シャル君と私

 

 

 

「うわあああ!何が略奪愛だあああ!」
「ぎゃあああああ!」
「うおおおおおおお!!」

酒盛りをしていたウボォーとノブナガの二人の所に、叫びながら突進したら絶叫が帰って来た。そのまま地面に胡坐を掻いて座っている二人の間にスライディングで飛びこんで額が地面に擦れて熱を孕んだ。
ああ、もういやだ。何でクロロに惚れてんの。わけわかんない。接点殆ど無いだろうに。
瓶ごと飲み始めると、二人は怪しむ目つきで混ざって来た俺を見ている。俺はもうどうでもよくて、酒があってストレスを発散できそうな二人がいるならそれでいい。何時でも殴れる距離にあって、いつでも愚痴をこぼしても拾ってくれるこの範囲が丁度いい。
今他には誰もいない、クロロはもちろんとして、他の団員も戻って来ることはない。

「あー、もう駄目だ。ノブナガ、俺どうしたらいいんだと思う?」
「いや、さっぱりわからねえけどよ、略奪愛がどうのこうのって叫んでたって事は、コレ絡みか?」
「・・・・。」
「ぎゃあああ!」

ニヤニヤと小指を立ててきたので、その小指を摘まんで、逆方向に倒すとノブナガが舌を出しながら叫び声を上げながら、後ろにのけぞって倒れた。

「テメッ!いくら俺でも無防備な状態で小指にそんな事されりゃあ死ぬぞ!」
「小指で死ぬわけないだろ。」
「おいおいシャル。お前どうしたんだ、らしくねーじゃねえか。」
「いや、だからあれだろ?色恋の悩みなんだろ?」
「・・・まあ、そうだけど・・・。」
「マジかよ。そんな悩むくらいいい女なのか。」

ウボォーが見せろ見せろと言って来たけれど、残念ながらの顔は中の下くらいだし、もしくはそれ以下かもしれない。何なんだろう。普通の中学生なのに、あと少しで高校生だけど・・・ああ、そうか、もう高校生なのか・・・あんなに小さかったのに・・・あれ、高校生・・・何か大丈夫な気がしてきた。あと一年すれば俺結構オープンに行けるかもしれない。

「やめとけウボォー。知ってんだろ?シャルはロリコンだからな。」
「え、あれ本当だったのかよ!?」
「ああ、団長も確認済みだから間違いねえって。なあ、シャル。」
「・・・。」
「ほら見ろ。」
「うげー、マジかよ・・・」

無言で焼酎を飲んでいると、ノブナガがウボォーに笑いながらそんな事を言っていた。ウボォーは舌をべっと出して、心底共感できないと言う様な顔をしている。
別に共感してもらう必要はないし、っていうか高校生だし。中学生じゃなくなったら多分OKだ。きっとOK。年齢だって法律的には結婚してもいい年齢だし、そうだ。それ強いな、結婚出来る年齢、これをクリアすれば全て許される気がする。

「シャルお前眼を覚ませ!」
「開眼してるよ。」

胸倉を掴んで揺さぶって来るウボォーに、静かに告げる。悪いけど俺はずっと通常通りだ。

「んで、略奪愛云々はアレか?その彼女が他の男作っちまったとか?」
「・・・・。」
「図星か。・・・まあ、どっちも餓鬼なんだからよ、力づくでなんとかすりゃあいいんじゃねーの?」
「お前は本当に力があれば何でもできると思ってんだなあ・・・」
「なんだその眼は。」
「憐れんでんだよ。」

ウボォーとノブナガの恋愛談議が始まる中、俺は二人の間に置かれている酒瓶を取ってコップに注いで飲んだ。
あー、くそー・・・いや、まだ失恋したわけじゃないし、クロロが好きって事が発覚しただけだし。告白したけど、返事貰えて無いだけだし。まだ絶望する時じゃない。

「で、本当はどうなんだ?」
「・・・いや、まあ。」
「なんだよ、此処まで来て愚痴るんだったら全部吐いちまえよ。」
「・・・別に。」
「なんだよ。」

意外と親身に聞いてくれそうなノブナガに、思わず言おうと思ったんだけど、よく考えてみたら、がクロロを好きなだけで、はっきりと振られたわけじゃないし、相手は子供で、もしかしたら憧れ程度のもので、っていうか、それだけでこんなに荒れてるなんて事がはっきりとバレたらどれだけの笑いを生みだすか。
酒の力もあって、馬鹿にするような言葉も口からダダ漏れになるだろう。それだけは嫌だ。

「まあ、ね。ちょっと色々とあって。」
「だから、その色々がなんなのか聞いてやろうつってんだろうが。」

ノブナガが珍しく正しい事を言っている。もし俺がノブナガの立場だったらそう言うだろう。何でこういう時だけ考え方が同じになるのか。いつもみたいに馬鹿でいればいいのに。

「話したくない。」
「こっちが気になるんだから言えよ。」
「そうだそうだ。人の不幸は蜜の味っつーだろ。」
「煩いなあ。今の時点で十分に蜜堪能しただろ。」
「これ以上のものがあるんなら出しちまえよ。」
「蜜っていうより膿みたいな言い方だな。」

豪快に笑うウボォーは、どうやらこれ以上は踏み込んでこないらしい。ノブナガはまだ気になっている様子だけど、まあ諦めてくれるみたいだ。
ああ、それにしてもどうしようかな。顔を手で覆いながら考える。酒を飲みながら鈍る思考回路で、問題をずっと凝視し続ける。
とにかく、俺は今馬鹿になりたい・・・。






裏でテンパるシャルナーク。









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