ぼりぼりと鳴らない日はない。
風鈴、セミの鳴き声と同じ程夏に欠かせない音だと私は思う。

『蚊に刺されました』

『祝杯』

『蚊が』

『ワイン』

『グラス一杯吸われたら』

『死にはしない』

『フェイさんは?』

『ない』

『蚊すら近寄らない』

『文明の機器』

『蚊取り線香』

『スプレー』

『昔からある』

『電磁波』

『ホワイ?』

『仲間作った』

『まさかの』

『上司の眉間に刺さった 切れた 命令』

『上司さんに世界平和を命令させれば』

『どうだろう』

『まんざらでもない』

『平和嫌い』

『人間とは思えない』

『蚊がいなくなるなら』

『世界の平和=蚊のいない世界』

『そう』

『ゴキブリは?』

『別に』

『フェイさんの基準おかしい』

ぼりぼりとかきながら、でも確かに、ゴキブリは気持ち悪いだけで、こんな実害はないよな、と、かゆみに嘆いている私は、あの黒光りの悪魔を許す寛容さをほんの少し見せてしまった。